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Essayエッセイ

エッセイ「心の音」

2025 年 8 月
大阪・関西万博

2025関西万博に行ってきた。
猛暑の中だったが、明兄が関わっているパビリオンがあるため、どうしても、それだけでも、、、という思いが拭いきれない中、私自身のスケジュールがこの時期しか時間を取れないためだった。朝早く起きて夜までに帰宅する、という弾丸日帰り万博!
前日からワクワクソワソワ、なんといっても楽器を持たない完全プライベートなんてほぼ皆無!小学校の頃の遠足気分で、夏バテ用品を揃えたりちょっとしたお菓子をバックに入れたり、お水を凍らせて保冷袋に入れて、、、と、夜遅くまでなんだか楽しみで寝付けなかった。
共についてきてくれた友人と新幹線の座席で待ち合わせ、車内でお弁当を食べるのも(いつも車内弁は、していることなのに)友人と二人だと楽しい。
明兄に教えてもらった通りの行き方で万博に辿り着くと、いよいよ来たぞという期待感で気持ちも上がる。そこはイメージしていたよりずっと巨大な空間、どこまでも点在する各国・各企業のパビリオン。ずいぶん前からさまざまな意味で有名になっていた大屋根リングも、実際行ってみてこの足で上まで登ってみると、リングそのものの全体像が見渡せないほどの大きな立派な建築物。圧巻だ。そのリングの上から眺める景色も、それぞれの個性的なパビリオンの屋根、あれやこれやが垣間見れて楽しい。リングを一周したくても2キロあるので、灼熱の太陽下でのウォーキングはやめておく。しかしこのリングは木造建築として世界最大なのだという。実際目の前に現物を見るとなかなか感慨深いものがある。組み立てられた木材はそのまま仕組みがわかるようなむき出しの状態であり、それがまたなかなかの見応えになっている。その木材の上から、例えば一般的な建築物のように壁を作ったり布を貼ったりなどのお化粧をしてない分、材木の一本いっぽんがどのように支え合って出来ているのかが見て取れて、私は大変興味深く感じた。

さて、150以上ものパビリオンの中で、どのパビリオンを選ぶか、、、万博に訪れる時には大変悩ましいことだろう。
しかし私の場合は兄・千住明が関わっているパビリオンを観るために、兎にも角にも万博会場へやってきたのだ!
タクシーやバス、乗用車などを利用する人が入る西口から入って、すぐの左側に位置するパソナ館が私の第一目標だ。
白い建造物。アンモナイトと巻貝をモチーフにしたパソナ館の細くなってる先の方にちょこんと『アトム』が座っているので、分かりやすい。よく見ると、アトムは何かを指差している。指差している方向は淡路島だ。実は、この万博終了後に、パソナ館は淡路島へ移転されるのだということを聞いた。それも楽しみなことだ?

そのパソナ館に、真っ先に足を運ぶ。
入った途端から『生命進化の樹』と題した大きく細長い筒、足の下から天井の上の方まで過去から未来へ造られているのは、かの岡本太郎さんの太陽の塔をオマージュに、モチーフとしたのだという。それから始まり、巨大なアンモナイトは当然本物だ。まるで宝石の如く煌めく光を放ち、こんな天然物があるのかと息を呑むほど美しい。館内全体を流れる音楽がさまざまな想像力を掻き立てて、まさに千住明ワールド。手塚治虫先生の世界とのコラボレーションとして全体を統一させているのだ。ブラックジャックと鉄腕アトムの「その後の」ストーリーにより、その二人が希望に満ちた未来へと導いてくれる。
パソナ館は希望と夢をこのパビリオンに詰めて私たちを誘う。
さて、話題のips細胞が見られる!ips心臓・ipsシートが赤い液体の中で命の脈を刻み、その様子をこの目で実際見ることができるのだ。こんなふうに見ることが出来るなんて、思ってもいなかった。生きてるips細胞はエネルギーを消耗するために次第に小さくなってしまうので1週間ごとに取り替えるらしい。
最も私が感動したのは『natureverse』ショーだった。
積み木のような四角い大きなたくさんのオブジェが積み重なって広い空間の真ん中に置かれている。その周りを私たちはぐるりと見て回ることが出来るのだが、まずは静止画として未来の映像を映していたかと思っていたら、ショーが始まると、なんとその積み木のような大きな物体が右に左に、上に下に動き、そこに映し出されるブラックジャックと鉄腕アトムによるコラボレーションの物語、、、ダイナミックな音楽は千住明作品、さらに様々な照明やレーザーが加わり大スペクトラルショーに感動しきり。繊細で、かつダイナミックなショーはもう一度観たいと思うほどだ。

パビリオン、もう一つ挙げるならばそれはイタリア館だろう。イタリア館については、すでに評判も広がっていて、皆さんも気になるところか。
確かにすごい。
「ファルネーゼのアトラス」これは、古代ローマ時代(西暦150年頃)に大理石で造られた等身大よりやや大きめの彫像(イタリア国立ナポリ考古学博物館所蔵)。
そしてバチカンの展示は、バロック期の巨匠 カラヴァッジョ(ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ1571−1610)の名作
『キリストの埋葬』が間近に観られるのが驚きだ。
バチカンといえば、私が所有するStradivarius『デュランティ』のいわば故郷(一人目の所有者がローマ法王・バチカン)なので、個人的に見逃すわけにはいかないパビリオンであり、恐らくこの機会を逃すと生涯見ることのできない絵画なのだと思うと身体が震えた。
さらに、レオナルドダヴィンチの直筆!当たり前だが、どれも本物だ。私が実物を見ることが出来るのはこの万博の機会しかない。

この猛暑、酷暑の時期に行くというのにはだいぶ二の足を踏んだのだが、行って本当に良かった。
まだ万博に行ってない方々には、開催されている期間に是非ともおすすめしたい。少し暑さが和らぐ頃がいいのだろうとも思う。私の場合はなんといっても、今年デビュー50周年を迎えているため、9月からは記念コンサートが様々控えているので行けるとしたら猛暑期間しかなかったのだ。
皆さんは10月まで開催されている万博の最後の方が狙い目かとも思う。一方で、暑い代わりにやや空いてる感も、ある。

じわじわと時間が経つにつれ、万博のそれぞれの重みが身体に沁みてきて、今更のように感じ入る私である。