昔はコーヒーが苦手だった。
昔というより大学卒業するくらいまで、コーヒーを美味しいと思って飲んだことがなかったように思う。
時折お付き合いで、または打ち合わせなどで皆さんがコーヒーを飲んでらっしゃる場面では、紅茶とかジュースとか別の飲み物をあえて注文するのも迷惑がかかると感じて、注文の際に、同じものをお願いします、と言って済ませていた。
コーヒーが美味しいなあと思ったのは、多分40歳を過ぎた頃からだと思う。
たまたま友達のお宅へ遊びに行った時に自ら、豆から引いて、丁寧にペーパードリップに粉を入れて抽出してくれた。
初めはほんの少し、沸騰したお湯をチョロチョロと流し入れて蒸らす。少し待ってから、再び熱湯を円を描くようにして均一に細ーくたらしていくと、粉の表面が細かい泡でふんわり膨らんでくる。すると、とても香ばしい香りが部屋中に広がり、その香りを吸い込んだだけで幸せな気持ちになってくる。
そうやって丁寧に淹れてくれたコーヒーは、格別な旨味を感じた。その時から、私はコーヒーが大好きになった。
コーヒーにも色々な種類があると知ったが、私はとにかく酸味が苦手で、むしろ少し苦いくらいがグッとくる。当初はお砂糖を入れて飲むのが好きだったが、そのうち甘くない方が後味スッキリだと分かった。
で、最近では朝飲む時には牛乳や豆乳、ピーナッツミルクなどを入れてまろやかにして飲むことが多い。
本番前は、とにかくコーヒーが飲みたい。この時はブラックだ。
コーヒーがアスリートにとっても良いらしいと言う話を最近耳にした。
コーヒーのカフェインが集中力を高めて、筋力の疲れも遅らせる、と言うことらしい。神経を研ぎ澄ませることによって、目前のパフォーマンスに対する集中をし易くするのと、パフォーマンス中の疲労感が軽減することによって持久力が維持されるのだと。
本番前に「目を覚さなきゃ」となんとなく飲んでいたコーヒーも、それなりに意味があるかも知れないなあと思うとますます美味しく感じてくるのだ。
私の場合は水泳の前にもコーヒーを一杯飲んで向かうことが多い。
水泳には週に2〜3回通っていて、特に本番の日の夜には凝り固まった筋肉をほぐすために泳ぐ。本番後だからとても疲れていて、「このままワイン飲んで寝たいなあ」という誘惑に惑わされるのだが、それをすると翌朝の筋肉疲労が半端ない。
そのため、疲れていようとも身体のケアを考えれば泳いだ方が良く、そこでコーヒーを一杯飲むのだ。
フッと行く気になり、それ以上は余計なことを考えないようにしてジムへ向かうのだ。
コーヒーのカフェインは脂肪をエネルギーに変える働きもあり、泳いだあとのスッキリ感は、心も身体も心地良い。
朝の散歩に出ると、最近ではコーヒースタンドに立ち寄る楽しみもある。コーヒーを味わいながらその日のスケジュールを考えたり、こうしてエッセイを(スマホで)書いたり、必要なメール返事を送ったりする。
さて、家に帰ったらヴァイオリンルームへ直行して、一日が始動する。
マイルーティンにコーヒーは欠かせない。