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Essayエッセイ

エッセイ「心の音」

2023 年 9 月
おせっかいのススメ

素晴らしいスピーチを聞いた。

15歳の女の子「おせっかいを広めれば」というテーマのスピーチだ。
明るく透き通った声で、説得力のあるスピーチをしたその子の名前は佐々木春樺さん。
横浜市で開催された子供のための大会、「国際平和のために自分がやりたい事をテーマにスピーチする」という場。横浜市内小中学生が思いのたけを発信する「横浜こども国際平和、スピーチコンテスト」。
その最優秀賞である「市長賞」に見事選ばれたのが、彼女だった。
テーマである「お節介を広めれば」そのテーマを聞いた時には、たわいもない話なのかな?という印象だったのだが、しかしどういう内容なのかなと興味があり、そのスピーチを聞いてみた。
それは彼女の祖母の話から始まった。近くに住む祖母の家には海外のお土産物がたくさん並べられている、というところから、彼女は「何故だろう?」と考える。
今こそ、コロナ禍やご年齢によってなかなか海外には行けずにいる彼女の祖母だが、話はその昔へとさかのぼる。
まだ彼女が生まれるずっと昔、祖母は様々な「おせっかい」をしてきたのだという話になっていく。祖母は来日した見知らぬ留学生の質素な生活を心配し「おせっかい」をやく。様々な国から留学してきた外国人、困ってる留学生を家に招き、泊まらせてあげたり、ご飯を食べさせてあげたりしていた祖母。そのように他者に目を向け、心を寄せて行くうちに互いの文化や歴史を知ることになる。様々な国の人々との交流を深めていく中で、「おせっかい」という親切を受けた彼らは逆に、それぞれのふるさと帰国すると祖母を招待し、海外へむかう祖母。知らない国へ訪れるとそこで生まれる交流、絆、縁が繋がって行く。
知らない国の困っている人たちの幸せを願い、手助けをし、絆を深めて行く祖母。「おせっかい」という思いやりを受けたたくさんの人々は、その後幸せな人生を切り開いたという報告を受ける。そしてその人もまた、身の回りで困ってる人々への心優しい「おせっかい」を積極的に行っていったに違いない。
幸せの輪がどんどん広がって行く様子が見えてくる。

人と人との繋がりが加速的に希薄になってきている昨今、コロナ禍になってからはますます、コミュニケーショが減ってきている世界で、逆に殺伐とした事件、争い、終わりの見えない戦争、、、。
そんな今こそ、春樺さんのスピーチにあるように、隣にいる他人への思いやりは、一人またひとりの隣人へと繋がっていき、やがては大きなうねりになっていくのではないか、
困ってる人の心に勇気を持って(おせっかいを持って)触れること、一人で悩んでる人の心にそっと寄り添うこと、、、、。

なんだか、いつのまにか忘れていたような気がするな。コロナ禍で自分自身が感染しないように気をつけるのでいっぱいいっぱいで、仕事がどうなるかを心配したり、感染してしまった方々を気に留めたりしていつのまにか気持ちに余裕を持てなかったな。
透明な心で、直球の言葉で、私の胸に刺さった佐々木春樺さんのスピーチ、聞いてよかった。
ありがとう!