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Essayエッセイ

エッセイ「心の音」

2022 年 2 月
寒い!

こんなに寒かったかなあ、と思うほど今年の冬は寒い。

2月は特に、12月頃から徐々に蓄積していた寒さがあらゆる物を完璧に冷やしている。「世の中丸ごと冷凍庫」みたいに、建物や椅子、床や道路などの全てをすっかり冷やしてしまってあるから、寒さが募る。身体の芯まで凍えてしまう。

そもそも私は昔から冷え性だった。だからか、特に寒さがこたえる。
手足が一年中冷えていて、夏の暑い日に汗をかいていても、何故か手足は冷たい。
ヴァイオリンを弾いていても手だけは冷たくて、手袋は手放せなかった。小学生時代には簡易使い捨てカイロを、手袋の中に入れたり靴の中に入れて学校に通っていた。ステージ前に、特に手が冷たくて困る時には暖かいタイプのペットボトルにお湯を入れて、本番前まで手を温めることもあった。がある時、お湯で長い時間かけて手を完全に、ぽかぽかに温めてから弾いたら、むしろ動きが緩慢になってしまい弾きにくかったのでびっくりした。
つまり指の動きに冴えが無くなるのだ。だらんと鈍くなってノロノロとしか動かない。
身体もそうだろうかと考える。
確かにぬくぬくとしたお部屋にじっと座っていたり、コタツに入って美味しいものでも食べていたりすると、動きたくなくなる。何もする気が起こらなくなる。
動かないから手に届くものだけで用事を済ませ、届く範囲に置いてあるものを口に入れ、ますます動けなくなる。
次第に脳内まで動きが鈍くなる。
ボーッとして眠くなり、なんか自分がダメ人間になって行くような罪悪感させ感じながら、そのままダラダラと一日を過ごすことになる。
悪循環だ。
寒いのは厳しいが、ぬくぬくしてしまうと良くない。
適度に温かく、少し寒さも感じながら、、、そんな微調整も難しいが、まあその程度が仕事に向かう気持ちにさせてくれそうだ。

それでもこんなに冷える日が続くと、どこかの温泉地にでも行きたい気持ちになる。コロナ禍がなかなか収まらない昨今では、自宅のお風呂に浸かるのがいっぱいいっぱいだが、銭湯という手がある。自宅のお風呂よりは広々していて、広いお風呂に入るだけでもリラックス効果はかなりあるらしい。
都内でも、探すと温泉の銭湯もある。温泉ではなくても様々な種類の湯船があるのは楽しい。マッサージ効果のある湯船に浸かりながら、嗚呼、日本に生まれてよかった〜なんて思ったりする。
こんな風に、たまに都内の銭湯を探して行くのも楽しいのだが、それも、しかし依然として正体の分からない新型コロナウィルスの事が頭をよぎれば、今はまだやめておこう、となる。
湯船では湿度が高いから大丈夫だと言われても、脱衣場に人が複数いればドキッとなるし、その方々がマスクを外して話をしていればとても怖いと感じる。
温泉や銭湯に浸かれれば、ほてった身体で外に出て、冷たい空気も心地よく、改めて頭もシャキッとなり、気分爽快、コンディションも整うこと間違いない。

何も不安に思わずにゆっくり銭湯や温泉に浸かれる日が、いつになったらやってくるのだろう。
お風呂に入浴剤を入れながら、今日もそんなことを考えてしまう。