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Essayエッセイ

エッセイ「心の音」

2019 年 9 月
井沢千住博美術館

軽井沢には千住博美術館がある。
その美術館の作りがまた面白い。全面ガラスで、床は平らではなく緩やかに波打つ水面のようになっている。
その中も閉ざされた空間ではなくちょっと迷路のような楽しさがある。

さて、その美術館には20代の頃に描かれた作品から現在に至るまで、様々なテーマで描かれた数々の絵画が展示されている。そしてその展示作品は時期によって入れ替わるので何度でも楽しめる。
例えば20代で描かれた作品。これはビルの廃虚のような哲学的なものや人物、それが30代では次第に鮮やかな色彩に変わり、美しい森や川辺だったり、大自然の風景に変わる。
さらに、今では代表作となった「ウォーターフォール」と題した滝の絵は有名だ。ベネチアビエンナーレで賞をとった作品でもある。
この滝は絵筆で描かれただけではなく絵の具を吹き付けたり上から垂れ流したり、といった特殊な方法で製作されている。
その後も、岩壁を題材にした絵では 紙を手でもみくちゃにしたりした工夫が面白い。

いま美術館では和紙に水墨で仕上げられた空間がある。空の雲の変化を何通りにも変えて描かれているのだが、これには照明を工夫した結果、まるで絵が光ってるように見えて面白い。
また、軽井沢には軽井沢ビールがあり、そこにも兄千住博の絵が起用されているのも、なんだか嬉しい。また、そのビールが美味しいのだ。
そんなだから軽井沢はなんだか地元感が湧いてくる。

さて、夏の終わり、この美術館に上皇陛下、上皇后様がお出まし下さった。
千住博、明、真理子の3兄妹がお出迎えさせて頂き、絵画をご覧頂いた。
美智子様はたえず上皇陛下と御手をおつなぎになりながらお歩きになる。そのご様子をそばで拝見させて頂けることが、この上なく幸せだと感じた。
上皇陛下、上皇后様からはこの2月に陛下在位30年記念式典での演奏についてのお言葉を頂いた。大切に思われている沖縄への気持ちをお話し下さり感激のひとときであった。
最後に千住博絵画起用の軽井沢ビールを献上、とてもにこやかにお喜び頂けたのが嬉しかった。