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Essayエッセイ

エッセイ「心の音」

2019 年 6 月
憧れの98歳

98歳にして、今もなお現役ピアニストとして活動を続けておられる方がいらっしゃる。その名も室井摩耶子さん。
私の憧れの存在であり、目標のお姿としてとても尊敬してる。

そもそもの出会いは数年前になる。
あるテレビで室井摩耶子さんが90台のピアニストとして紹介されていたのを私が観たことがきっかけになった。
その様子は、確か他に90台で活躍なさってる様々な方、~例えば90台のスイマーや現役で働いてる方などが紹介されていて、本当に驚いた。
みなさん生き生きとされていて、お元気で、考え方が前向きなのが印象的だった。
さらに目立ったのが、肉をパクパク召し上がるお姿だった。「お~、やっぱり肉だ!肉にく!」と私も再び肉に対する想いを新たにした。
実際、室井摩耶子さんも「お肉が大好き!」と明るく元気におっしゃって美味しそうに召し上がり、さらにピアノの前に座ったかと思うと突如、流れるような、涌き出るような「生きた音楽」を奏でられた。
そのことに感動した私は、ある日新聞のコラムに室井摩耶子さんのことを書かせていただいた。
すると、それから数週間たった私のコンサートにお花を携えていらして下さったのだ。
ビックリした。
なんという行動力!
そして、新聞もくまなく御覧いただいていたなんて。
その後、お礼のお電話をおかけすると、電話口から聞こえてきた摩耶子先生のお声の、なんと若々しいことか!
その弾んだリズム感のあるおはなしぶりを耳にして、私はますます摩耶子ファンになった。ご著書も何冊もある。早速本屋へ行き買い求め、「どんな風に考えたり行動したりすればあのような素晴らしい音楽家になれるのか」ということを勉強したり、研究したりした。
その後、摩耶子先生には仲良くしていただき、たまにお手紙やお電話で交流させていただいている。

さて、この4月に98歳になられた室井摩耶子さん。
久々にお宅をお訪ねすると、かわらぬお元気なお姿と弾む艶やかなお声で出迎えて下さった。
実は、そのもようは先月末に放送された、日本テレビ「1分間の深イイ話」の密着取材で、室井摩耶子さん宅を訪問させていただいたのだ。
とても98歳とは思えない容姿やお喋りにスタッフも驚きを隠せなかった。
お話は多岐に渡り、途中でふと立ちあがりおもむろにピアノの前に座るや否や、「エリーゼのために」を弾き始める。
流れ出す音の流麗さ、摩耶子さんご自身の心が音に変化して行くのが見えるようで、私は身体がすくむほどの感動を覚えた。現役ピアニスト室井摩耶子健在、である。
まだまだ十分にお元気な室井摩耶子先生。
私たちの希望の光となってさらに輝き続けて欲しい。
そして、その小さなお身体からつむぎ出されるダイナミックな芸術を、ひとりでも多くの人びとに届けていただきたい。