50年という区切りは特別の意味がある、と常々感じていた。
45でも55でもない50、という区切り。終わりであり始まりでもある新たな区切り。
だからこそ2025年のデビュー50周年は集大成として捉え、自身にとって重要な一年だと感じた。
そのため色々な楽曲、様々な演奏会やイベント、私自身思い入れのある作品を是非多くの皆様に聴いていただきたくて、実にたくさんのコンサートが企画された。そんな一年間がもう終わりに近づいている、、、。
50周年の最初に行った演奏会は、イザイの無伴奏全7曲(未完成作品を含む)だった。あれはやはり本心、大変だったなあ!とつくづく。テクニックや暗譜もさることながら、歳を重ねての体力と精神力、持続力。愛するイザイをみなさんに聴いていただきたいというストレートな想いから企画した無伴奏演奏会だったのだ。
コンチェルトリサイタルはメンデルスゾーンとチャイコフスキー、この2曲は私の演奏家としての50年をポイントで抑えてきた外せないコンチェルトだったので、2025年の今年発売に向けて、50周年記念アルバムとしてレコーディングをし直した2大コンチェルトでもある。
明兄とのオペラアリアコンサートも特別なものだった。全曲明兄のオーケストレーションによって豪華に編曲された名曲オペラアリアを、歌うように奏でる嬉しい試みだった。
特に珍しいコンサートとしては、二人の兄と3兄妹によるビッグコンサートも、記憶にふかーく刻まれたコンサートとなった。3兄妹コンサートは25年ぶりであり、25年前に行った時にはまだ3人がそれぞれの専門を生かしきれてなかったように今感じている。その時にもしかし、3人の表現が一つのものとして作り上げることがとても難しく、周りのスタッフの方々はまとまらない意見に振り回されていたような大変さがあった。そして今回3人が一緒に創り出す表現は、想像していたよりも更に更に『産みの苦しみ』が大きかった。これではコンサートが出来ないのではないかというピンチが何度も訪れたし、何より3人のそれぞれについているスタッフが(スタッフだけのミーティングとして)何度も何度も集まって悩んだり相談したり、とずいぶん苦しめてしまったと思う。そのおかげでまさに唯一無二のパーフォーマンスとなった『千住家の軌跡』コンサート、もう2度と出来ないコンサートなのではないかと思うと、今となっては実に名残惜しい感情も湧いてくる。
クライスラー生誕150年記念オールクライスラーリサイタルも格別なものだった。普段演奏している作品半分、ほとんど演奏会で披露してない作品半分、クライスラーの内面の繊細さや深みが色濃く浮かび上がるようなプログラムになったと思う。
その他色々な曲を取り入れた各地でのリサイタル、お話を聞いていただくための講演会もちらほらと。
そしていよいよバッハ無伴奏全6曲演奏会は11月に京都で既に全6曲、北九州で3曲のリサイタルを行っていて、東京が最後のバッハ無伴奏全曲演奏会となる。
東京公演ではこの50年の葛藤と喜怒哀楽が染み込んだ感慨深い響きになるのだろうと感じている。
バッハが終わる頃になると街は既にクリスマスのイルミネーションですっかり彩られているのだろう。
クリスマスの雰囲気も取り入れたコンサートが各地で続いて、12月は最後まで感謝を込めた演奏にしたいと思っている。
思えば、50周年のために大変頑張ってくれているマネージャー、マネージメント、コンサートを企画したり運営してくださってる各地の関係者の方々、ステージで共に唯一無二の音楽を創り上げてくださったオーケストラ、指揮者、ピアニストなどの共演者のみなさん、そして客席から温かい拍手や声援で応援してくださったファンの方々や初めて聴きに来てくださった方々、更にこの50年の間、共に歩み支え応援してきてくれた大切な友達、そして陰でいつも支えてくれていた2人の兄たち、、、、
こうして改めて考えてみると、本当に本当に、沢山の方々に支えられてやっと私がここに居る。やっとこうしてヴァイオリニストとしてステージに立つことが出来ているのだなあ、、、としみじみ、心からありがとうと叫びたい!
忘れてはならないのが、今は亡き大切な方々。恩師、親しかった友人・知人、祖父母や父母。そのような存在は、ステージに立つ私にその気配を感じさせてくれていることでエネルギーを貰えている気がする。
さて、12月、いよいよラストスパートのデビュー50周年記念コンサート、各地の皆様、是非聴きにいらしてくださいね!会場で皆様のお越しをお待ちしています。