CD 「愛のクライスラー」発売に際して
ヴァイオリンが歌い、ヴァイオリンがなく。
ヴァイオリンは語り、ヴァイオリンは叫ぶ。
そのどれもが、まさにクライスラーだ。
ヴァイオリンという摩訶不思議な楽器を熟知していたクライスラーこそが、我が永遠に憧れ崇拝するヴィルトゥオーゾなのである。
今回私は、クライスラーの作品を皆様にたっぷり聴いて頂きたい。
その世界は、軽やかにウィーンの風を吹かせたり、しっかりと心底の淵をのぞかせたり、多種多様に展開する。
多くの顔をもつクライスラーは、決して一色の世界ではないのだ。
クライスラーの作品には、そこにしかない匂いが漂い、哀愁が心にしみる。
クライスラーの世界にはまると、ヴァイオリンから離れられなくなる魔力にさえ、とりつかれてしまうのだ。
これこそが「ザ・ヴァイオリン」である。
千住 真理子