ヴァイオリニスト、千住真理子の公式サイトです。

エッセイ「心の音」:縄跳び (2020年5月)

2020/5/1

縄跳び

外出自粛期間中は、体が鈍る。
長年、水泳を欠かさずやっていたのだが、スポーツセンターが現在は自粛休業中なのでプールで泳げない。
当然、ジムも使えないしヨガのスタジオレッスンもないから普段の様々なスポーツは出来ない。
ウォーキングをしようかと思うが、あまりいろんな場所を歩き回るのは、遭遇する他者との思わぬ接触が起きるかも知れないから、やめておこうと思う。
そこで思いついたのが、縄跳びだ。
縄跳びの縄を1本持って、人のいない公園へ行くようにした。
縄跳びは、小学生の頃、学校でよくやった。
私が通ってた小学校は慶應義塾幼稚舎で、担任の先生は6年間変わらない。我がクラスでは1年生の時、担任の先生から縄跳びの縄が配られて、毎朝や昼休みに縄跳びを跳ぶのが私たちの日課になった。先生も一緒にもなって楽しい縄跳びの時間が増えていった。6年間続いた縄跳びの時間、始めはみな、ほとんど跳べなかったひとも、毎日6年間、私たちはどんどん上達していった。
縄は本当の縄だから、重たい。そして、長く飛んでると地面に当たる部分だけ切れてくる。
縄が真二つに切れてしまうと、先生は新しい縄を下さる。
一生懸命に縄跳びを練習する子は二重跳びや二重あや跳びなど、難しい跳びかたを次々に覚えていくのと同時に、縄が切れて、新しい縄を先生から頂くことになる。
そうやって私たちは、縄跳びに夢中になっていた。
その頃から私は、バイオリンにも夢中になっていたから、縄跳びとバイオリンの練習はリンクしていった。バイオリンの難しいテクニックも、毎朝縄跳びを跳ぶように日々何回も繰り返して練習すれば、きっと弾けるようになる。
100回、200回…とバイオリンのテクニックを練習するようになって、私はだんだんと弾けるようになり、その達成感が心地よくなった。
今、久しぶりに縄跳びを跳ぶ。
縄のずっしりとした感触が、朝の清々しい空気を運んでくる。あの学校の、校庭の空気だ。朝日に照らされて、友だちの顔が輝いていたあの瞬間に、戻れるような気がした。