ヴァイオリニスト、千住真理子の公式サイトです。

エッセイ「心の音」:2020年4月

2020/4/1

新型ウィルスの影響

新型コロナウィルス感染拡大の影響で、結果的に3月のコンサートは全てが延期、または中止となった。
3月といえば、私の場合はイザイ無伴奏全曲演奏会が京都と横浜市青葉台で予定されていた。イザイ無伴奏全曲に向かうために数ヶ月前から練習を計画的に行って準備をしていたので、ショックもあったが、何よりもいらして頂く聴衆のかたが不安な気持ちになってしまうことは避けたかった。結局延期になったため練習プランを組み直している。コンチェルトがいくつか中止になったことも残念だった。コバケン先生とのチャイコフスキーや、久しぶりに演奏する予定だったブラームスも随分時間をかけてさらっていたわけだ。そんなことを考えると、大変だなあと思うのがオリンピック選手だ。
来年に延期になったことで、何年も前から計画的にコンディションを整えて、身体を作り上げて行くプランが崩れたのだという。種目によっては選考会も関わってくるだろうし、心身共に疲弊が増すのは否めない。相手が目に見えないウィルスだから、始末が悪い。しかも新型だから、確実なことは専門家の方々さえ、計り知れない部分もあるようだ。
いったいいつ収束するのか、見通しが立たない中で、東京都では感染者も急激に増えて、外出を控えるよう要請がでた。

さて、私は。
ゆっくり自分と向き合う。じっくり音楽と対峙する。
誰の為でもない、自分に聴かせるバイオリンを弾く。コンサートのために準備する練習に代えて、自分の目指す音楽の在り方をじっと見つめる。
こんな時間は今までなかった。それもそのはず、12歳でプロデビューしてからずっと、山あり谷ありの波瀾万丈の波におぼれそうになりながらも、楽器を構えるときにはプロとしての責任を持ってのバイオリンだった。
だから今、不思議な感覚だ。
純粋に音楽を見つめ直し、芸術への道を模索する、こんな貴重な時間を与えられて言葉もない。
一方で、他人と触合い語り合うという人類のすべてのコミュニケーションを閉ざされ、神様は何を私たちに伝えたいのだろうか?