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エッセイ「心の音」:2018年4月

2018/4/1

書くのは好きだ。
昔から好きだった。
本当は原稿用紙にB4の濃い目の鉛筆で文字を埋めていくのが好きなのだ。
鉛筆の感触、文字を書く楽しみ、日本語の魅力がそこにある。
残念なことに、現在はメールで原稿を送信するため、原稿用紙は使わなくなった。いつか、原稿用紙に戻りたいという想いは温めている。
さて、子供の頃は、心の中の想いを日記にして書いていた。それは他人に見せたくない日記、誰にも言えない秘密めいた気持ち、嬉しかったこと、傷ついたこと、些細な心配ごとや、腹がたっておさまらないことなんかを書きなぐったりしてすっきりしていた。
バイオリンに関することも多く、思い付いた練習方法、ひらめいた表現とか、メモをする感じで書くときもあった。
人様に読んでいただくことを意識して書くようになったのは、22~3歳位だったと思う。
エッセイを頼まれるようになり、少しずつ、自分の書き方を模索しながら、当時はレポート用紙に書いたり原稿用紙に書いて郵送していた。
強烈に鍛えられた思い出がある。NHKTV大型報道番組「ワールドネットワーク~世界は今」で文化面のキャスターをする仕事をさせていただいた時だ。
2年続いたその報道番組のために、私は月に1回のペースで10日間の海外取材に行かされた。
毎回、普通にヴァイオリニストをやっているだけでは絶対行かないような場所や、出会わない方々、話すこともないであろう全くジャンルの違う人々に取材したりインタビューしたりした。そして必ずしなければならない宿題があったのだ。
それは日本で待つNHKプロデューサーへのレポート提出だった。提出したレポートはそのまま番組の構成の土台に使われると同時に、NHKから出版される月刊誌に掲載されるのだった。
海外取材で考えたこと、感じたことや問題提議をまとめ、帰りの飛行機の中でレポート15~20枚(400字の原稿用紙で15~20枚)に書かなければならなかった。
慣れないうちはかなりきつい作業だったが、それがあったために、自分の考えを客観的に見つめ直し、または考えの矛盾点を自ら発見することで自分自身の成長につながったのだと思う。
実際、書くことは、いい。
頭の中が整理される。
自分の考えを冷静に見直せる。
書きながら初めて気がつくこともある。
外部から得た情報を、文字にとどめておくことも大切だ。
何より自分自身と真っ正面から向き合えて、自分で自分を教育出来る。
もちろん、誰かに伝えたい想い、多くのかたへのメッセージ、言葉で心の中を表現していくことも素晴らしいコミュニケーションだと思う。
ということで始めることにしたエッセイ「心の音」。
“あなた”ともっと、つながりたいから!

千住真理子